私が現場で20年以上、老人ホーム選びの相談を受けてきて、相談者の施設に対してのイメージがとても悪すぎる。
その理由が、昔の富裕層向け、リゾート(温泉付き)や、重度の方を受け入れる療養病院などを思い浮かべ、費用が高くて入れない、母は元気で認知症も無いから、あそこには入れたくないなどの思いがわき、施設=かわいそうという考えになるケースです。
マスコミでは、施設で事故があった場合、過剰に報道で取り上げます。確かに、施設での転倒などは日常の生活で多々あります。施設だからといって、転倒などの事故を100%防げるわけでもありません。
施設に対してのネガティブな報道が、相談者の悪いイメージを膨らませ、かわいそうと言う言葉が出てしまいます。
「施設だけは絶対に嫌」そう言い続けていた家族
「施設に入れるなんて、かわいそうじゃない?」
相談の現場で、何度も聞いてきた言葉です。
このご家族も、最初は強くそう思っていました。
親はまだ会話もできる。
歩くスピードは遅くなったけれど、意思もある。
だからこそ、**“施設=最後の場所”**というイメージが拭えなかったのです。
「できる限り家で」
それが家族の共通認識でした。
在宅介護が始まり、少しずつズレていった現実
ところが、在宅介護が始まると、理想と現実は噛み合わなくなっていきます。
- 夜中に何度も起きる
- 服薬管理がうまくいかない
- 火の消し忘れ
- 外出先での迷子
- 感情の起伏が激しくなる
家族は交代で見守り、注意し、フォローし続けました。
でもそのうち、
「言っても分からない」
「どうしてできないの?」
そんな言葉が、つい口をついて出るようになります。
本人の表情が、少しずつ曇っていくのを、家族も感じていました。
家族の笑顔が消え、イライラがつのり、今にも手が出そうな時も多々ありました。
「かわいそう」という言葉の裏にあった本音
現場で感じるのは、
「かわいそう」という言葉の多くは、罪悪感の裏返しだということです。
- 自分が面倒を見切れない情けなさ
- 親が認知症、弱った親を認めたくない
- 周囲からどう見られるかという不安
- 親を手放すような感覚への恐れ
このご家族も、まさにその状態でした。
でも、在宅介護を続けるほど、
本人は萎縮し、家族は疲弊していきました。
きっかけは、たった一言だった
転機になったのは、ある日の一言です。
「……ここにいると、迷惑ばっかりかけてる気がする」
親本人が、ぽつりとそう漏らしました。
家族は、その言葉に何も返せなかったと言います。
その時初めて、
「家にいることが、必ずしも幸せではないのかもしれない」
そう考えるようになりました。
半信半疑で見学した有料老人ホーム
紹介を受け、有料老人ホームを見学したときも、期待はしていませんでした。
ところが現場では、
- スタッフが“注意”ではなく“声かけ”をしている
- 失敗しても誰も責めない
- 入居者同士が自然に会話している
- 面会に来ている、娘さんと楽しそうに話している
その空気感に、家族は驚きました。
「かわいそう」というイメージと、
目の前の現実が、完全にズレていたのです。
入居後に起きた、意外な変化
入居してしばらくすると、変化ははっきり表れました。
- 表情が明るくなった
- 自分から挨拶するようになった
- 食事量が安定した
何より大きかったのは、
「申し訳なさ」が消えたことでした。
家族に対してではなく、
“役割を持った一人の入居者”として過ごせるようになったのです。
家族の気持ちも、静かに変わっていった
面会に行くたび、
家族は「介護をしに行く」のではなく、
「会いに行く」感覚になっていきました。
怒ることも、焦ることも、ほとんどなくなりました。
母のいつもお友達や、ヘルパーさんと話している笑顔を見るたびに、
幸せな気持ちになりました。
そして、あれほど口にしていた
「施設はかわいそう」という言葉は、
自然と出なくなっていたそうです。
私は、20年の相談経験の中で、常に感じて取り組んできたのは、施設介護の良さをもっと、もっと世の中の人にしつかりと伝えていきたいと常に感じて、行動してきました。
一番良いのは、百聞は一見に如かずということわざがあるように、まずは施設を見ることから始める事が、一番良いのではないかと思います。
現場で伝えたい、この実話の本質
施設介護は、
親を見捨てる選択ではありません。
環境を変えることで、その人らしさを守る選択です。
在宅か、施設か。
白黒で考える必要はありません。
大切なのは、
「今、この人にとって何が一番穏やかか」を考えること。
このご家族は、
有料老人ホームという選択で、
ようやく“家族”に戻ることができました。
※この実話は「施設介護に助けられた5つの実話」シリーズの一つです。
ほかの事例(在宅介護の限界/認知症介護/独居の不安 など)もまとめて読みたい方は、親記事で全体像を確認できます。
▶ 【保存版】施設介護に助けられた5つの実話まとめ


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